2011年12月27日火曜日

「暮しの手帖」の似合う本屋でありたい

これは あなたの手帖です

いろいろのことが ここには書きつけてある

この中の どれか一つ二つは 

すぐ今日 あなたの暮しに役立ち

せめて どれか もう一つ二つは

すぐには役に立たないように見えても

やがてこころの底ふかく沈んで

いつかあなたの暮し方を変えてしまう

そんなふうな


これはあなたの暮しの手帖です

















北書店画廊 12月~1月の展示

暮しの手帖初代編集長
花森安治 生誕100周年記念パネル展

開催中(2012年 1月14日迄)

1月の高山なおみさんからはじまった今年の北書店画廊。
1年振り返ると本当にもったいないくらいの錚々たる方々の
展示をさせていただきました。お世話になった作家の皆様に
心よりお礼申し上げます。

 年末年始を飾るのは、今年が生誕100周年ということで、出版や、
全国各地での展示が相次いだ暮しの手帖初代編集長「花森安治」。

肖像写真・名物企画の「テストシリーズ」・「編集者の手帖」という
連載のなかの決意表明のような一文、編集部から見た花森安治など、
様々なテキストをパネルにして読み込める展示になっています。
ジャーナリストとしての花森安治の軌跡を振り返るわけですが
誌上で展開される主義主張とともに、ぜひ見ていただきたいのは
その誌面構成の芸術性です。タイトル文字の入れ方、手書き文字
と写真のバランス、圧巻なのは自ら筆を取った表紙の装丁画の数々。
北書店画廊で展示したいと、かねてより願っていた所以です。



あ、これしか撮影しなかった。すいません。これは「写真表紙バージョン」でした。
イラストシリーズはぜひ当店にてご覧いただけたらと思います。

何十年も前のものなのに、という表現もどうかと思います。見ていて
飽きない。(今ある雑誌が新しいかといえばどうなの?と問われたら
・・・まあどうでもいいか)
氏の言葉に(うろ覚えですいませんが)
「いくら機能性に優れていても花柄のなべは使いたくないという精神」
というのがありました(よね?)が、「暮しの手帖」はまさにそうです。
ためになる記事、おもしろい連載がレイアウトによってさらに魅力的なものに
見えます。デザインに惹かれてこの雑誌を手に取る若い読者が多いのも
うなずけます。読者層が広いのもこの雑誌の特徴です。

北書店もそうありたいものです。いくらいい本を仕入れたとしても、それを
どこに並べるのか、表紙を見せるのか、あえて背表紙を目立たせるのか、
売れ行きを重視するあまり、脈絡なくなんでも目立つように並べたり、
編集者の思いのこもった表紙を覆い隠すような手書きポップを立てたり
していないか?自問すればまだまだ遠く及ばないわけですが、この雑誌が
北書店の空間作りの、一つの指針になっていることは間違いありません。

冒頭引用した巻頭の辞は、今、松浦弥太郎氏に引き継がれています。
暮しの手帖の編集長を任されるという重圧いかばかりか、しかし見事に、
毎号新しい空気を感じさせながら花森の精神もそこに落ちている。
展示の一角に、感想を書いていただくコーナーも作りました。暮しの手帖の
思い出や、松浦氏、編集部へのメッセージなど、ご自由にお書きください。

それと商売の話(笑)花森安治が装丁を手がけた、暮らしの手帖社(版元名は「ら」が入る)
の書籍、装丁画ポストカードセット、イラスト入りマグカップ等もあわせて販売しています。
おススメは2012年花森安治カレンダー。その月が終わったら額装すれば2度
楽しめる、当店のカレンダー売り上げぶっちぎりの人気商品です。こちらもぜひ
お手にとってご覧ください。関連商品をお買い上げのお客様には、会期限定の、
暮しの手帖特製ノート(非売品)を差し上げています。

概要はざっと書けるのですが「花森安治」について、私の力ではお伝えするのは難しい。
戦争への反省から(有名な話ですが大政翼賛会の宣伝部に在籍し、国策広告に
関わっていました)ひとりひとりの暮らしを見つめ直そうと始まった暮らしの手帖。
エロも小説もゴシップ記事もない。「商品テスト」の中立性を守るために広告も載せない。
「広告のない雑誌」という広告。無言の強烈なメッセージ。こうして他の雑誌が決して
真似のできない唯一無比の雑誌は60年続いてきました。めまぐるしく情報が更新されて
いく今の時代にも、奇数月の25日に、この雑誌は届きます。


「すぐには役に立たないように見えても やがてこころの底ふかく沈んで いつか
あなたの暮し方を変えてしまう」


それはなにか。だけど私は、それを伝えたいから展示をするわけではありません。
(さっきデザイン性を見てもらいたいと書きましたが)そんな立場にいるはずもない。
ただ、仕事をし、家庭に戻り、その繰り返しの「暮らし」のなかで、時に弱気になる
自分自身への檄なのかもしれません。

















皆様のご来店をお待ちしています。


今回の展示にあたり、暮らしの手帖社営業部の池上氏に大変お世話になりました。
お忙しいなか、こちらの要望に、きめ細かくご対応くださったことを感謝します。